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所長挨拶

皆様には、ご清栄のこととお喜び申し上げます。
省みますと、以前の会計事務所の仕事は記帳作業が大きな割合を占め、担当者は振替伝票などから総勘定元帳に転記、試算表の貸借が合えば、その月の仕事が完了するようなことをやっていました。転記ミスがあると赤いインクで訂正の2本線が引かれ、実にみっともない帳簿になってしまうのです。黒くて硬い表紙でしっかりと装丁された帳簿のため、ページを差し替えるわけにもいかず、インクのぼた落ちやお茶をひっくり返した跡までしっかりと記録されてしまいます。1冊の元帳には、会社の1年間の成績と歴史が刻まれていました。
こんなソロバン時代に、ソロバンが遅くて字の汚い私を丁寧に指導してくれた先輩たちには今も感謝しています。それでもコピーやコンピューターなどの事務機器類が少しづつ技術進歩と低価格化し、側面から支えてくれるようになりました。当時は、まだまだ中途半端な機能しかなかったけれども、むしろ私にとってはこういった機器に希望を見出して率先して導入するなど、いわば「怪我の功名」と言っても良いでしょう。
5～6年というのは、歴史が変わってしまうほどの変化が起こる忙しい時代を迎えています。事務屋さんには進歩を遂げた機器類が味方についてくれ、この変化に対応できると喜んだのも束の間、人の能力が相対的に退化をはじめたのか、機械依存から逃れられないジレンマに落ち込みました。やはり、ソロバン時代の大脳の働きをもう一度思い出して、機械に首根っこをつかまれて身動きが取れなくなるようなやり方は反省すべきでしょう。
当事務所のコンピューターが保守期限を迎え、新たな投資を行なうことになり、ある種の苛立ちを長々と皆様に聞いていただきました。
昨今は、情報が溢れ、知りたいことが即座に知りうる便利な世の中になっています。その一方で､先がなかなか読めないという難しい時代でもあるとも言えましょう。もっともっと「先見の明」や「予見性」があればなあ、と思うのは、万人共通の悩みかも知れません。
分類と集計から導かれた財務諸表が様々に活用され、これが簿記会計の基本原理であるように、情報も科学的に整理すれば、少しは予見性が高まるというものです。あとは、「人間力」でしょうか。
税理士は、制度発足から60数年、税金の計算だけでなく最も身近な情報源であり、良き相談相手として存在してきました。昨今は、ご相談は「任せたよ」から、「何とかしてよ」になって、「どうすればいいのか？」に変わってきました。人任せでなく、ご自身自ら行う部分が次第に大きくなり、その分、専門家に対する要求がますます高度化し、私共の責任も大きくなってきています。
何でも仕事にしてしまうことは企業としては大切なことで、お客様に対する基本的な姿勢かも知れません。私共も税に関することをはじめ、経営上の問題は､果敢に何でもこなしてきました。しかし、今、求められているのは、こういった何でもこなす仕事に加えて、企業と会計事務所がより高い次元の仕事に進化するべきものである､と考えます。そうでないと、どちらも時代の片隅に置いていかれることとなりましょう。
事務所の沿革にありますように、私共事務所は３代に亘り、初代所長から数えて、半世紀以上が経ちました。初代が税務署OBで、いかにも事務所らしく重々しくて、近寄りがたい雰囲気が漂っておりましたが、今は明るくて気さくな職員ばかりです（たぶん）。前段で書きましたとおり、事務作業は、インクとペン、そろばん、機械式計算機、邦文タイプライターから、パソコンと業務用コンピュータが中心となり、比べものにならないほど進化しました。業務の品質も格段に進化しているはずですが､朝礼などを通じて、日々反省を忘れないようにしています。
関与先各位の絶大なご信頼を得ることを目標に、地に足をしっかりと着けて、なおいっそう諸業務に励みますので、ご期待とご支援を賜りますようお願い申し上げます。